ジージバーバの孫への愛が深すぎて、ブラジルに届きそう。
孫は、特別可愛いと聞きます。
親ほどの責任からは開放され、子育てを一通り終えた経験もあることから、余裕を持って孫と関わることができます。
息子にとっての爺婆も例外になく、息子を愛でまくってくれます。
私たち家族にとって、大変ありがたい事です。
そしてその愛は留まる所を知らず、私も知らなかった親の新たな一面を引き出すこともしばしば。
先日、某大型ショッピングセンターへ息子と私の両親、それから私で出かけてきました。
話をスムーズにする為に、ここでは私の母をバーバ、私の父をジージと表記しますね。
そのスーパーには、人気キャラクターがついた幼児用のカートが数種類あります。
お座りがしっかり安定して、ハンドルを握る事ができるようになった息子を、そのカートに乗せようということになりました。
しかしその日は日曜日。ショッピングセンターは家族連れでとても賑わっており、未使用のキャラクターカートはどこにも見当たりませんでした。
可愛いカートに乗った子供を見るたび、バーバは、「あれに乗ったら、〇ちゃん喜ぶだろうね。」とか、「〇ちゃんの好きなキャラクターだね。」とか、寂しそうにつぶやくのです。
確実に、息子が乗りたい気持ちより、バーバが乗せたい気持ちの方が上回っています。
ちなみに、この「〇ちゃんの好きなキャラクター」というのは、ただのバーバの決めつけです。
なぜかバーバは、息子はこのキャラクターが好きに違いないと思っていて、せっせとキャラクターグッズを集めてくれるのです。
私はキャラクターものに特に抵抗も無いので、それで息子やバーバが楽しいのなら、ありがたく受け取ります。
話がずれましたね。
とにかく私たちは、ショッピングセンター内をウロウロしながら、未使用のキャラクターカートを探していたわけです。
ショッピングセンターは2階建て。吹き抜けの作りで、2階から1階を見渡すことができます。
何気なく1階を見ていたバーバが急に、「あ!あそこにカートがある!」と騒ぎ出しました。見ると、ピンク色のキャラクターカートがポツンと1台、乗り捨てられています。
バーバは次の瞬間、走り出していました。颯爽と、エスカレーターを駆け下りていきます。
私の頭の中では、尾崎豊が流れていました。
盗んだバイクで走り出す~行先も~わからぬまま~♪
バーバが走る姿をみたのは、何年振りでしょうか。というのも、バーバは膝が悪く、走る事はおろか長距離を歩く事でさえも支障をきたしているのです。
そんなバーバが、走った。←森本レオ風に読んでください。
しかしここで、バーバに悲劇が起きます。バーバの目の前で、他の家族連れがカートを持って行ってしまいました。
ただただ、運が悪かったのです。バーバもさぞ悲しんでいるだろう。そう思った私は、バーバに労いの視線を送ります。
バーバが振り返ります。私達をまっすぐ見て、拳を上げます。よく見ると、親指を立たせています。
私とジージが困惑していると、バーバは私たちの視線が届かない場所へ消えていってしまいました。
10分後、バーバはキャラクターカートを押しながらさっそうと現れました。
ピンク色の、女の子が好きなキャラクターのカートでした。
バーバはほくほく顔で、息子をカートに乗せます。
「狙っていたカートのずっと先に、このカートがあるのが見えたのよ!」
「久しぶりに全力を出しちゃったわ~!」
どうやら、アドレナリンが出まくっているようで、膝に爆弾を抱えていることは忘れていたようです。
孫への愛、プライスレス。
カートを押す係には、ジージが任命されました。
うちのジージは自由な人で、時折フラフラと姿を消してはバーバに怒られていました。
何度目かのジージ失踪で、バーバの怒りは徐々にヒートアップ。次にジージが戻ってきたら、また怒られるのだろうなと思っていたら、どこからともなくジージがほくほく顔で現れました。
何がほくほく顔なのか。
息子が乗っているカートが、女の子が好きなキャラクターから、男女どちらも好きなキャラクターに変化していました。
「乗り換えした。」
ジージは一言そう言い、バーバはジージを褒め称えました。
正直息子は、まだ特定の好きなキャラクターというのはありません。なので、乗り換えたところでテンションも変わりません。しかし、止まらないジージのどや顔。
最終的に息子は、バーバが決めつけている息子の好きなキャラクターカートに乗車していました。
わざわざ買い物した荷物を積みかえなければならないので、私なら乗り換えなんてめんどくさいと思ってしまいます。
しかし、ジージとバーバは、息子が少しでも喜ぶようにと、せっせと荷物を積みなおしていました。
孫への愛、はんぱないですね。
キャラクターカート一台で、ジージとバーバの深い深い孫愛を垣間見た出来事でした。